106万円の壁撤廃で何が変わる?2026年10月からの社会保険・扶養・手取りを整理

106万円の壁撤廃による社会保険・扶養・手取りの変更点を整理 お金の教科書

情報確認日:2026年9月27日

「106万円の壁がなくなったら、扶養を気にせず働ける?」「10月から、パート全員に社会保険料がかかる?」

最初に押さえたいのは、なくなるのは社会保険の加入条件の一つであり、保険料や扶養の条件がすべてなくなるわけではないということです。

日本年金機構の2026年9月16日更新の案内では、短時間労働者の「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件は、2026年10月に撤廃されます。[1]

この記事では、主に配偶者の扶養内で働いている20~59歳のパート・アルバイトの方に向けて、加入条件、130万円の壁との違い、保険料の計算例、勤務先への確認事項を整理します。

※一般的な制度と家計確認の方法を説明する記事です。個別の加入判定は勤務先・年金事務所、被扶養者の認定は加入先の健康保険へ確認してください。年齢、障害の状態、学生かどうかなどにより扱いが異なります。金額例は説明用の架空例であり、筆者の家計・相談実績ではありません。

106万円の壁で撤廃されるのは「月額8.8万円以上」の条件

「106万円」は、月額8.8万円を12倍した105万6,000円を年収の目安として表したものです。もともと、1~12月の収入合計が106万円を超えた瞬間に加入する、という判定ではありません。[2]

2026年9月までの賃金要件では、基本給などの所定内賃金を確認し、賞与・残業代・通勤手当などはこの8.8万円の判定から除かれます。2026年10月は、この賃金要件がなくなる変更です。[1・3]

変わる条件と、引き続き確認する条件

次は、通常の労働者の4分の3基準を満たさない「短時間労働者」についての主な整理です。4分の3基準は次の節で説明します。

確認事項2026年9月まで2026年10月から
所定内賃金月額8.8万円以上この賃金要件を撤廃
週の所定労働時間20時間以上引き続き確認
雇用期間2か月を超えて雇用される見込み引き続き確認
学生の扱い原則、学生ではないこと。例外あり引き続き確認
勤務先の企業規模等原則、厚生年金の被保険者数51人以上の企業等。例外あり10月時点では引き続き確認。企業規模は後年に段階的に拡大

日本年金機構の適用拡大案内・公式リーフレットに基づく整理です。「週20時間だけで、どの会社でも加入が決まる」という意味ではありません。[1・3・4]

自分が加入対象になるかは、この順番で確認する

1.まず「通常の労働者の4分の3以上」に当てはまらないか

社会保険の適用事業所で働き、週の所定労働時間と月の所定労働日数が、通常の労働者のどちらも4分の3以上であれば、原則として健康保険・厚生年金保険の加入対象です。これは今回の106万円の壁とは別の判定です。[5]

「パートという名称だから対象外」「会社が小さいから入らない」とは限りません。まず勤務先に、通常の労働者との時間・日数の比較を確認します。

2.4分の3未満なら、企業規模と短時間労働者の条件を確認する

4分の3基準を満たさない場合は、勤務先が短時間労働者の適用対象か、そのうえで週20時間以上などの条件を満たすかを確認します。[3]

ここでいう「51人以上」は、店舗にいる全従業員を数えた人数ではありません。原則として厚生年金保険の被保険者数を基に判定し、法人の場合は同じ法人番号の事業所を合計します。小さな店舗でも、同じ会社全体では対象となる場合があります。[3]

企業規模が基準未満でも、労使合意等による任意特定適用事業所なら対象になります。国・地方公共団体等にも別の取り扱いがあります。[3]

3.契約書の時間だけでなく、更新見込み・勤務実態も確認する

所定労働時間は、雇用契約書や就業規則などで定められた勤務時間です。原則として残業時間とは分けます。ただし、契約上は週20時間未満でも、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その状態が続く見込みなら、3か月目から加入対象になる取り扱いがあります。[6]

また、「2か月を超える雇用見込み」は、入社から2か月間は必ず加入しなくてよいという意味ではありません。短い契約でも更新見込みを含めて確認が必要です。学生についても、休学中・夜間・通信制などの例外があります。[3・6]

加入条件を満たした場合、原則として「扶養内でいたいから加入しない」と自由に選べる仕組みではありません。 自分の判断で勤務時間や給与だけを調整する前に、適用される条件を確認してください。[3・5]

10月から、パート全員が新しく保険料を払うわけではない

日本年金機構は、最低賃金以上で週20時間以上働く場合、所定内賃金が月額8.8万円以上になることを説明しています。ほかの条件も満たし、すでに社会保険へ加入している人は、賃金要件の撤廃だけで「10月から初めて加入する人」になるわけではありません。[7]

たとえば、次のように確認する内容が異なります。

現在の状態まず確認すること
すでに勤務先の社会保険へ加入している加入をやり直す話ではない。勤務条件や給与控除に変更があるか
配偶者の扶養内で、対象企業で週20時間以上働いているこれまで対象外だった理由と、現在の契約・適用状況
週20時間未満で働いている4分の3基準や勤務実態、別途の被扶養者の収入条件
小規模な会社で働いている企業規模の数え方、任意適用の有無、今後の適用拡大時期

これは確認の入口であり、表だけで加入可否を確定するものではありません。最低賃金の減額特例の対象者には別の取り扱いもあるため、該当する場合は勤務先・年金事務所へ確認してください。[1・3]

企業規模の条件は、2027年以降に段階的に変わる

賃金要件の撤廃と、企業規模要件の撤廃は同時ではありません。短時間労働者の適用対象となる企業等の範囲は、次のように広がります。[4]

時期企業規模要件の基準となる厚生年金保険の被保険者数
2027年9月まで51人以上
2027年10月から36人以上
2029年10月から21人以上
2032年10月から11人以上
2035年10月から企業規模要件を撤廃

任意適用等の例外はあります。「2026年10月から、従業員数を問わずすべてのパートが対象」とは読み替えないでください。[3・4]

130万円の壁・税金・配偶者手当は、別々に確認する

「扶養」という言葉には、異なる制度が混ざりやすくなっています。

よく混同されるもの何を判断する条件か主な確認先
106万円の壁短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金保険へ加入する条件の一つ。2026年10月に賃金要件を撤廃自分の勤務先・年金事務所
130万円の壁健康保険の被扶養者などの収入条件。原則として60歳未満の配偶者では年間収入130万円未満が目安配偶者の勤務先・加入先の健康保険
所得税・配偶者控除等本人と配偶者の所得などに応じた税金・所得控除給与担当者・税務署等
勤務先の配偶者手当会社独自の手当の支給条件手当を支給する勤務先

社会保険、税、企業の配偶者手当は別の仕組みです。社会保険の扶養を外れたことだけで、税の配偶者控除等も一律に使えなくなるとは判断しません。[2・8・9]

年収130万円未満なら、必ず扶養内というわけではない

先に確認するのは、勤務先で社会保険への加入対象になるかどうかです。対象なら、年収130万円未満でも自分の勤務先で加入します。逆に、勤務先の加入条件を満たさないまま扶養を外れる場合は、国民健康保険・国民年金等の手続きが必要になることがあります。[7]

また、健康保険の被扶養者認定は、年末の給与合計だけで決めるものではありません。2026年4月からは、一定の条件で労働契約内容に基づく年間収入見込みを使う取り扱いも始まっています。[8]

日本年金機構の案内では、契約上の賃金から見込む年収が基準未満で、ほかの収入が見込まれず、生計維持関係などの条件も満たすことが必要です。この賃金には諸手当・賞与を含みます。契約期間やシフト・手当の記載によって、この方法を使えない場合もあります。[8]

この取り扱いも、勤務先で加入する義務を免除する制度ではありません。 「契約書に130万円未満と書けば誰でも扶養に入れる」という理解は避け、確認書類と扱いを保険者へ問い合わせてください。[3・8]

保険料を引くと、給与はいくら残る?架空例で確認

社会保険に加入すると、健康保険・厚生年金保険などの本人負担が給与から控除されます。健康保険料は加入先等で異なり、厚生年金保険などは給与を区分した「標準報酬月額」を使って計算します。[10・11・13]

標準報酬月額には、基本給だけでなく、通勤手当や残業代なども関係します。加入判定に使っていた「月額8.8万円」の賃金範囲と、加入後の保険料計算に使う報酬は同じではありません。[3・13]

試算条件:35歳、協会けんぽ千葉支部に加入する場合

月給12万円と15万円の、2つの独立したケースを比較します。どちらも勤務先の社会保険・雇用保険に加入する条件を満たす設定です。

これは「同じ働き方なのに、撤廃前は保険料ゼロ、撤廃後に発生する」という比較ではありません。 給与から差し引く項目の大きさを確認するための例です。

条件は35歳、賞与・各種手当なし、一般の事業の雇用保険に加入、保険料調整制度等による軽減なしとします。健康保険料率9.73%、厚生年金保険料率18.3%、子ども・子育て支援金率0.23%は労使合計の料率なので、この例では本人がそれぞれ半分を負担します。雇用保険の本人負担は賃金の0.5%です。[10・11・12]

40~64歳の介護保険料は、この35歳の例には加えません。健康保険・厚生年金保険・支援金は標準報酬月額、雇用保険は実際の賃金を基に計算しています。

以下は所得税・住民税・その他の給与控除を差し引く前の概算であり、実際の手取り額ではありません。

月ごとの金額月給12万円の例月給15万円の例
額面給与120,000円150,000円
標準報酬月額118,000円150,000円
健康保険・厚生年金・支援金・雇用保険の本人負担合計約17,300円約21,900円
上記を引いた後・税金等を引く前の残額約102,700円約128,100円

協会けんぽ千葉支部の保険料額表と2026年度の雇用保険料率を使った独自試算です。負担合計と残額は、丸める前に計算し、それぞれ100円単位に四捨五入しています。実際の給与計算の端数処理とは差が出る場合があります。[11・12]

給与が12万円から15万円に変わった直後、必ずその月から標準報酬月額も変わる、という例ではありません。また、残額には勤務に伴う交通費・保育費等や、配偶者の手当の変化を反映していません。

手取りの比較は、本人の給与だけで終わらせない

家計として比べるときは、次の形で整理します。

家計に残るお金の変化
=本人の税・保険料控除後の収入の増減
+配偶者の税・手当を反映した収入の増減
-通勤・保育などの支出の増減

例えば、配偶者手当が減る、勤務日数を増やすと保育費が増えるといった条件があれば、それも計画へ入れます。すでに国民健康保険・国民年金を自分で払っている場合は、現在の負担との差で比較し、「加入前の負担はゼロ」と置かないようにします。

「年収がいくらなら全員が得になる」という一つの金額ではなく、自分の勤務条件で家計がどう変わるかを見ることが大切です。家計全体の整理方法は、「ライフプランニングの作り方」で解説しています。

社会保険加入は、保険料だけでなく年金・休業時の給付も確認する

保険料を引かれた後の給与が減る場合でも、制度の変化はそれだけではありません。厚生年金に加入すると、加入期間や報酬等に応じた老齢厚生年金が基礎年金に上乗せされます。将来の金額は個人の記録によって異なります。[7]

勤務先の健康保険の被保険者になると、要件を満たした場合に、業務外の病気やけがで働けない期間の傷病手当金、出産のため休んだ期間の出産手当金などの対象にもなります。[14・15]

ただし、加入すれば休業するたびに必ず満額支給されるわけではありません。働けない状況、休業期間、給与の支払いなど、それぞれの支給条件があります。出産手当金と出産育児一時金も別の給付です。[14・15]

本記事では、毎月の家計に与える影響と、病気・出産・将来の年金への備えを分けて確認することを提案します。公的保障を踏まえた備えの考え方は、「民間の医療保険は必要?」も参考にしてください。

保険料の支援は、全員に自動で適用されるものではない

2026年10月から始まる「保険料調整制度」には、対象となる勤務先・短時間労働者の条件があります。事業主が本人負担の一部を追加負担する仕組みで、対象は標準報酬月額12.6万円以下などの条件を満たす方です。利用には事業所側の手続きが必要で、一律に保険料がなくなる制度ではありません。[16]

上の試算には、この軽減を含めていません。勤務先が対象か、利用するか、本人負担はいくらになるかを給与担当者へ確認してください。

勤務先へ確認することを、1枚のメモにする

「結局いくらまで働いてよいですか」と一つの数字で尋ねるより、加入条件と給与・家計への影響を分けて確認すると整理できます。以下は、本記事独自の確認メモです。

確認すること質問の例
自分の加入条件4分の3基準と短時間労働者の要件の、どちらで判断されますか
勤務先の扱い特定適用事業所・任意特定適用事業所のどちらですか。企業規模はどの単位で数えていますか
時間・契約・開始日週の所定労働時間、更新見込み、加入日を確認できますか
給与からの控除標準報酬月額と本人負担の見込み、何月の給与から引かれるかを確認できますか
配偶者側の手続き扶養を外れる届け出や必要書類、配偶者手当の変更はありますか
利用できる支援保険料調整制度などの対象になりますか。適用条件と期間はどうなっていますか

まずは雇用契約書・労働条件通知書と、直近の給与明細を用意します。配偶者の手当は、配偶者の勤務先で別に確認してください。

勤務時間を増やすかどうかを考える場合は、次のように相談できます。

今の契約と、勤務時間を増やした契約の両方について、社会保険の加入条件と本人負担を確認したいです。加入が必要になる日、給与からの控除開始、扶養を外れる手続きも教えてください。

勤務先で判断しにくい場合は、適用条件を年金事務所、健康保険の扶養認定を加入先の保険者へ確認します。家計の調整は、その結果が分かってから行います。

まとめ|「106万円」だけではなく、加入条件と世帯の収支を分けて確認する

2026年10月に撤廃されるのは、短時間労働者の社会保険加入に関する所定内賃金月額8.8万円以上という要件です。週20時間、勤務先の適用状況、雇用見込みなどの確認は残ります。[1・3・4]

130万円の被扶養者認定、税金、会社独自の配偶者手当も、それぞれ別に確認する必要があります。[2・8・9]

働き方を考える際は、加入対象かを確かめる→保険料と税・手当を確認する→年金や給付も把握する→世帯の収支を比べるという順に整理してみてください。

必要な収入だけでなく、育児・介護・体調・希望する働き方も判断材料です。制度名や年収の目安だけで勤務を変えず、契約と家計の両方を確認することから始めましょう。

参考資料とこの記事の位置づけ

  1. 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大」(2026年9月16日更新):賃金要件の2026年10月撤廃。
  2. 厚生労働省「『年収の壁』への対応」:106万円・130万円と配偶者手当等の区別。
  3. 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」:企業規模の数え方、短時間労働者の条件、賃金・報酬の範囲。
  4. 厚生労働省・日本年金機構「社会保険加入対象者の範囲が拡大されるのをご存じですか?」(2026年4月時点版):企業規模の段階的な変更、加入条件、支援制度。
  5. 日本年金機構「適用拡大の実施により、短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の被保険者資格の取得要件はどのようになりますか。」:4分の3基準。賃金要件の変更時期は資料1を参照。
  6. 政府広報オンライン「社会保険の適用が拡大!従業員数51人以上の企業は要チェック」:所定労働時間と勤務実態、雇用期間、学生の取り扱い。過去の改正を解説した資料のため、撤廃時期は資料1・4で確認。
  7. 日本年金機構「パート・アルバイトの皆さまへ、配偶者の扶養の範囲内でお勤めの皆さまへ」:加入状況、年金・健康保険の給付。
  8. 日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」(2026年5月1日更新):2026年4月以降の認定方法と適用条件・留意事項。
  9. 国税庁「No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」:社会保険と税の判定の区別。本記事では税の全所得基準・税額計算は扱わない。
  10. 協会けんぽ千葉支部「令和8年度 保険料率について」:健康保険料率・介護保険料率・子ども・子育て支援金率。
  11. 協会けんぽ「令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(千葉支部)」:標準報酬月額と本人負担。子ども・子育て支援金は表の注記どおり2026年4月分から。
  12. 厚生労働省山形労働局「令和8年度の雇用保険料率について」:一般の事業の労働者負担5/1,000。
  13. 日本年金機構「標準報酬月額」:保険料計算に用いる報酬の扱い。
  14. 協会けんぽ「傷病手当金」:休業中の給付と支給条件。
  15. 協会けんぽ「出産手当金」:本人の出産に伴う休業中の給付と支給条件。
  16. 日本年金機構「保険料調整制度とは」(2026年9月11日更新):対象事業所・被保険者、本人負担の軽減の仕組み。

制度の説明と、本記事独自の確認順序・計算例・相談メモを区別しています。保険料率、企業規模、扶養認定などは変更される場合があるため、実際に勤務条件を決める際は最新の公式案内と勤務先・保険者の説明を確認してください。

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