抗菌薬(抗生物質)は、細菌による感染症の治療に使われる薬です。
「風邪のときにも飲んだ方が早く治るのでは?」と思うかもしれませんが、一般的な風邪の多くはウイルスが原因です。ウイルスに抗菌薬は効きません。
この記事では、抗菌薬が必要な場合と必要でない場合、服用するときの注意点を、患者さん向けに整理します。
抗菌薬とは
抗菌薬は、細菌を死滅させたり、増えるのを抑えたりする薬です。肺炎、尿路感染症、皮膚の感染症など、細菌が原因となる感染症で使用されます。
ただし、症状だけで原因が細菌かウイルスかを判断するのは簡単ではありません。病状、診察所見、検査結果などを確認したうえで、医師が抗菌薬の必要性や種類を判断します。
風邪に抗菌薬が効かない理由
| 原因 | 主な例 | 抗菌薬 |
|---|---|---|
| ウイルス | 一般的な風邪、インフルエンザなど | 効かない |
| 細菌 | 細菌性肺炎、尿路感染症など | 必要になる場合がある |
風邪の多くはウイルスによるため、抗菌薬を飲んでも回復を早める効果は期待できません。一方、風邪に似た症状でも細菌感染症が隠れていることや、経過中に細菌感染を合併することはあります。
そのため、「風邪だから絶対に不要」「熱があるから必要」と自己判断するのではなく、診察を受けて判断してもらうことが大切です。
必要のない抗菌薬を使うデメリット
- 下痢、吐き気、発疹などの副作用が起こることがある
- 腸内細菌など、体にいる細菌にも影響する
- 抗菌薬が効きにくい「耐性菌」が選ばれやすくなる
- 本当に必要になったとき、使える薬が限られる可能性がある
抗菌薬は「念のため飲んでおけば安心」という薬ではありません。必要な場面で、適切な種類・量・期間を選ぶことが重要です。
抗菌薬を飲むときの4つの注意点
1.処方された本人だけが使う
以前残った抗菌薬を自己判断で飲んだり、家族や知人に渡したりしないでください。同じような症状でも、原因や必要な薬が同じとは限りません。
2.指示された量・回数・期間を守る
症状が良くなっても、自己判断で中止・減量せず、処方した医師や薬剤師の指示に従ってください。反対に、症状が続くからといって予定より長く飲むことも避けましょう。
3.飲み忘れたときは2回分をまとめて飲まない
対応は薬の種類や次の服用時刻までの時間によって異なります。処方時の説明や薬の案内を確認し、分からなければ薬局・医療機関へ相談してください。
飲み忘れた直後、次の服用時間が近い場合、2回以上忘れた場合の対応は、抗菌薬を飲み忘れたときはどうする?で詳しく解説しています。
4.副作用が疑われたら相談する
発疹、強い下痢、吐き気などの副作用が疑われる場合は、処方した医療機関または薬局へ相談してください。
抗菌薬を使用した後に、息苦しさ、ゼーゼーする呼吸、喉の腫れで呼吸しづらい、意識が遠のくなどの症状が出た場合は、重いアレルギー反応(アナフィラキシー)が疑われます。医療機関の外では、相談の返事を待たずに119番で救急車を呼んでください。医療機関内では、直ちに近くの医療スタッフへ知らせてください。発疹がなくても起こることがあります。
ただし、重い副作用が疑われるときまで飲み続けるという意味ではありません。上記の緊急症状がある場合は救急対応を優先してください。
参考:PMDA「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー(患者の皆様へ)」
下痢が出たときの受診の目安と、相談時に伝える情報は「抗菌薬で下痢が出たらどうする?」で整理しています。
耐性菌とは
耐性菌とは、抗菌薬が効きにくくなった細菌です。人の体そのものが抗菌薬に慣れるのではなく、細菌の側が薬に対して抵抗性を持ちます。
必要のない抗菌薬の使用や、適切でない種類・量・期間での使用は、耐性菌が選ばれる一因になります。抗菌薬を適切に使うことは、自分自身だけでなく、将来の医療を守ることにもつながります。
詳しくは、耐性菌とは?原因・問題点・私たちにできる対策をご覧ください。
まとめ
- 抗菌薬は細菌に作用する薬で、ウイルスには効かない
- 一般的な風邪の多くはウイルスが原因
- 必要性は症状だけで決めず、医師の診断に基づいて判断する
- 処方された量・回数・期間を守り、自己判断で使用しない
この記事の情報について
- 情報の確認日:2026年8月25日
- 執筆者:たつまる(病院薬剤師・抗菌化学療法認定薬剤師)
- 確認先:厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第4版」
本記事は一般的な情報を整理したもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状や服薬について不安がある場合は、医師または薬剤師へご相談ください。


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