抗菌化学療法認定薬剤師は、感染症治療と抗菌薬の適正使用に関する知識・実践力を認定する資格です。
この記事では、実際に資格を取得した病院薬剤師の立場から、主な業務、2026年度の申請基準、取得までの流れを整理します。
抗菌化学療法認定薬剤師とは
公益社団法人日本化学療法学会が認定する薬剤師資格で、2008年に制度が始まりました。
感染症治療で用いる抗微生物薬について、患者さんの病態、感染部位、原因菌、腎機能、検査結果などを確認し、適切な薬剤選択や投与設計を支援します。
資格を持っていれば単独で診断や処方ができるわけではありません。医師、看護師、臨床検査技師などと連携し、薬剤師の専門性から治療を支える立場です。
主な業務
| 業務 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 抗菌薬の選択支援 | 感染部位、原因菌、培養結果などを確認し、薬剤選択を検討する |
| 投与量・投与間隔の提案 | 腎機能、体重、重症度などから用量を評価する |
| TDM | 血中濃度を確認し、有効性と安全性の両面から投与設計を行う |
| 培養結果の確認 | 原因菌と感受性結果を踏まえて、より適切な抗菌薬へ変更できるか検討する |
| AST・ICT活動 | 抗菌薬適正使用支援チームや感染制御チームで、多職種と連携する |
| 院内教育 | 抗菌薬、耐性菌、TDMなどについて医療従事者へ情報提供する |
実際の担当範囲は、病院の規模や人員配置、AST・ICTの運用によって異なります。
2026年度の主な申請基準
日本化学療法学会の2026年度案内では、新規申請には主に次の要件があります。
- 日本の薬剤師免許を持っている
- 薬剤師として抗菌化学療法に5年以上関わっている
- 申請時に日本化学療法学会の正会員である
- 感染症患者の治療に自ら参加した15症例を報告できる
- 必須項目を含む60単位以上を取得している
- 書類審査後、認定試験に合格する
2026年度申請から規則・施行細則と申請書式が変更されています。要件や受付期間は今後変わる可能性があるため、申請時は必ず公式サイトをご確認ください。
15症例報告で求められること
症例報告では、単に薬の用量や検査値を並べるのではなく、薬剤師としてどのように治療へ関わったかを示す必要があります。
- 患者背景、感染症名、原因菌、用法・用量・治療期間を記載する
- 介入内容と、その判断根拠を明確にする
- 介入後の経過と、症例から得た学びをまとめる
- ガイドラインや原著論文などを用いて考察する
2026年度の案内では、TDMを主体とした症例は3例までとされ、それ以外は処方変更など感染症治療への介入が必要です。
症例を整理するときの確認メモ
学会の記載要件を、提出前に点検しやすい形に整理すると次の3点です。これは書き方の確認用であり、合格を保証するテンプレートではありません。
- 自分の関与:治療のどの問題を確認し、何を提案したのか。測定結果だけの記載になっていないか。
- 判断の根拠:患者背景・検査結果と、使用したガイドラインや原著論文の内容がつながっているか。
- 介入後の経過:提案後に何を確認できたか。経過不明の部分を推測で埋めていないか。
実際の症例記録や提出は所属施設のルールに従い、患者さんを特定できる情報をブログへ載せないでください。学会指定の様式・注意事項を優先し、単位証明や施設の証明書類も症例とは別に準備します。
取得までのおおまかな流れ
- 感染症治療に関わる実務経験を積む
- 学会・講習会などで必要単位を取得する
- 日々の介入症例を記録し、15症例をまとめる
- 申請書類を提出する
- 症例一覧の書類審査を受ける
- 認定試験を受験する
2026年度の新規申請受付は4月1日〜8月31日必着で、2026年9月10日時点では、この受付期間は終了しています。新規申請と更新申請では期間が異なります。次年度の申請日程・書式は、日本化学療法学会の公式案内で確認してください。
実際に取得して感じたこと
私自身も、症例報告の作成、研修単位の取得、認定試験を経て資格を取得しました。
私の申請・合格までの記録
2025年12月9日の症例審査を通過したときの日誌では、症例を探す段階から苦労し、添削を受けながら改善したことを書きました。書類審査を通過しても試験は別の段階で、当時は購入したテキストを十分に読み込めていない不安もありました。
2026年2月16日の試験合格の日誌では、合否通知を待つ間の気持ちと、結果を知って安心したことを記録しています。この経過は私自身の当時の記録です。これから申請する方は、この記事の2026年度の基準を私の受験当時の条件と混同せず、申請年度の公式要項を確認してください。
大変だったのは、日常の介入を申請用の症例として整理することでした。
特に時間がかかったのは症例報告です。ただ症例数をそろえるのではなく、感染症の診断、薬剤選択、投与量、培養結果、治療経過を振り返り、自分の介入を文献と結びつけて整理する必要がありました。
準備は大変でしたが、日常業務で「なぜこの抗菌薬を選ぶのか」「いつ変更や終了を考えるのか」を根拠から考え直す機会になりました。
試験に合格したときの記録は、抗菌化学療法認定薬剤師の試験合格の記録にまとめています。
病院薬剤師として積んだ臨床経験を、メディカルライターとしてどう生かしたいと考えたかは、病院薬剤師からメディカルライターへ転職を決めた理由にまとめています。
私が主に使った教材
抗菌化学療法認定薬剤師の試験勉強では、主に『抗菌化学療法認定薬剤師テキスト 改訂版2021』を使用しました。
日本化学療法学会の書籍紹介では、感染症・抗菌化学療法の基礎に加え、配合変化や薬物相互作用、ASTにおける薬剤師の役割なども扱うと説明されています。内容や購入方法は、学会公式の書籍案内で確認できます。
なお、学会の2026年度認定試験案内では、出題範囲を特に限定せず、抗菌化学療法に関する領域から広く出題するとされています。このテキストのほか、抗菌薬TDM臨床実践ガイドラインや認定薬剤師講習会の内容なども挙げられています。「この1冊だけで十分」とは考えず、受験する年度の公式案内も確認してください。
資格取得を検討しやすい人
- 感染症患者への薬学的介入を深めたい
- AST・ICTで抗菌薬適正使用に関わっている
- TDMだけでなく、薬剤選択や治療期間まで学びたい
- 症例を根拠とともに振り返る習慣をつけたい
資格取得そのものが目的ではなく、学んだ内容を患者さんの治療や院内の抗菌薬適正使用に還元することが重要です。
まとめ
- 抗菌化学療法認定薬剤師は、日本化学療法学会が認定する資格
- 抗菌薬の選択、投与設計、TDM、AST・ICT活動などで専門性を活かす
- 新規申請には実務経験、研修単位、15症例、試験などが必要
- 2026年度から規則・書式が変更されているため、公式情報の確認が必要
この記事の情報について
- 情報の確認日:2026年9月10日
- 執筆者:たつまる(病院薬剤師・抗菌化学療法認定薬剤師)
- 確認先:公益社団法人日本化学療法学会
参考:日本化学療法学会|抗菌化学療法認定薬剤師制度 制度概要・申請方法
申請要件、必要単位、受付期間、書式は変更される可能性があります。申請前に必ず日本化学療法学会の最新案内をご確認ください。

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