※本記事は一般的な医療情報です。個別の診断や、処方された薬の継続・中止を指示するものではありません。
抗菌薬を飲み始めてから便がゆるくなることはあります。しかし、軽い軟便で経過を見る場合と、重い腸炎を疑って早く受診する場合では対応が異なります。
自己判断で抗菌薬を中止すると治療が不十分になる可能性がある一方、血便や強い腹痛を伴う下痢では迅速な対応が必要です。この記事では、抗菌薬適正使用に関わってきた病院薬剤師の視点から、症状の見分け方と相談時に伝える内容を整理します。
結論|下痢の程度と随伴症状で対応を分ける
| 状態 | 対応の目安 | 確認すること |
|---|---|---|
| 軽い軟便が1〜2回で、水分を取れている | 処方元または薬局へ相談し、服用方法を確認 | 薬の名前、開始日、便の回数 |
| 水様便を繰り返す、症状が悪化している | 早めに医療機関へ連絡 | 回数、発熱、腹痛、食事・水分摂取 |
| 血便、強い腹痛、高熱がある | 速やかに医療機関を受診 | 症状が始まった時刻、抗菌薬の最終服用時刻 |
| 尿が少ない、強い口渇、ぐったりする | 脱水の可能性があるため早めに受診 | 飲水量、尿量、嘔吐の有無 |
| 息苦しさ、顔やのどの腫れ、全身のじんましん | 重いアレルギー反応の可能性があり緊急対応 | 服用後から症状までの時間 |
年齢、基礎疾患、妊娠・授乳、使用している抗菌薬によって判断は変わります。次の服用をどうするか迷う場合は、処方した医療機関または調剤した薬局へ確認してください。
抗菌薬で下痢が起こる理由
腸内細菌のバランスが変化する
抗菌薬は原因となる細菌だけでなく、腸内にいる細菌にも影響します。その結果、便がゆるくなったり、下痢が起きたりすることがあります。
薬そのものの副作用として起こる
下痢、腹痛、吐き気などが副作用として記載されている抗菌薬があります。起こりやすさや注意点は薬ごとに異なるため、薬袋、説明書、PMDAの電子添文などを確認します。
Clostridioides difficile感染症の場合がある
抗菌薬の使用によって腸内細菌のバランスが崩れ、Clostridioides difficile(クロストリジオイデス・ディフィシル)という細菌が増えると、下痢や腹痛、発熱を起こすことがあります。CDIと呼ばれ、重症化することもあります。
抗微生物薬適正使用の手引きでは、過去3か月以内の抗菌薬使用がCDIのリスクとして挙げられています。抗菌薬を飲み終えた後に下痢が始まった場合も、受診時に抗菌薬を使った時期と薬の名前を伝えてください。
自己判断で抗菌薬を中止しない方がよい理由
抗菌薬は、想定される感染症、症状、検査結果、年齢、腎機能などを踏まえて処方されています。途中で中止すると、感染症の治療が不十分になる可能性があります。
一方で、PMDAの使用上の注意には、抗菌薬によっては血便を伴う重篤な大腸炎、腹痛、頻回の下痢が現れた場合に投与中止などの対応が必要と記載されています。
つまり、「下痢が出ても必ず飲み続ける」「下痢が出たらすぐ自分でやめる」のどちらも一律には言えません。症状が強い場合は受診し、軽い場合も処方元や薬局へ相談して個別に判断してもらいましょう。
相談するときに伝える6項目
- 抗菌薬の名前と1回量
- 服用を始めた日と最後に飲んだ時刻
- 下痢が始まった時刻と1日の回数
- 便の状態(水様、血液や粘液の有無)
- 腹痛、発熱、吐き気、発疹などの症状
- 水分を取れているか、尿が出ているか
お薬手帳や薬袋があると確認が早くなります。ほかの医療機関から処方された薬、市販薬、サプリメントも伝えてください。
自宅で気を付けること
水分を少量ずつ取る
下痢が続くと水分と電解質が失われます。一度に多く飲むと吐き気が出る場合は、少量ずつ補給します。心臓病や腎臓病などで水分制限がある場合は、自己判断で摂取量を増やさず医療者へ確認してください。
市販の下痢止めを自己判断で追加しない
下痢の原因によっては、腸の動きを抑える薬が適さない場合があります。抗菌薬と一緒に使えるかも薬ごとに異なるため、購入前に医師または薬剤師へ相談してください。
残った抗菌薬を後で使わない
今回の抗菌薬を残して別の症状に使ったり、家族へ渡したりしてはいけません。原因が異なれば効果がないだけでなく、副作用や薬剤耐性の問題につながります。
特に早めの相談が必要な人
- 乳幼児や高齢者
- 妊娠中・授乳中の人
- 腎臓病、心臓病、炎症性腸疾患などの持病がある人
- 免疫を抑える治療を受けている人
- 最近入院した人
- 複数の薬を使用している人
これらに当てはまらなくても、症状が強い、急速に悪化する、判断に迷う場合は早めに相談してください。
よくある質問
整腸剤やヨーグルトを取れば治りますか?
原因や使用している抗菌薬によって対応が異なります。整腸剤や食品だけで重い下痢への対応を遅らせないことが重要です。併用する場合は、薬の名前と症状を伝えて医師または薬剤師へ相談してください。
抗菌薬を飲み終わった後の下痢も関係ありますか?
関係する場合があります。受診時には、現在飲んでいなくても、最近使った抗菌薬の名前と服用期間を伝えてください。
夜間や休日はどこへ相談すればよいですか?
処方元の時間外連絡先、地域の救急相談窓口、救急医療機関を利用します。意識がもうろうとする、息苦しい、強い脱水症状があるなど緊急性が高い場合は、救急要請を検討してください。
まとめ
- 軽い軟便と、血便・強い腹痛・頻回の水様便では対応が異なる
- 抗菌薬の継続・中止は一律に判断せず、処方元や薬局へ確認する
- 水分摂取、尿量、便の回数、随伴症状を記録する
- 市販の下痢止めを自己判断で追加しない
- 服用終了後の下痢でも、最近使った抗菌薬を医療者へ伝える
抗菌薬の基本は、抗菌薬とは?風邪に効かない理由と服用時の注意点で解説しています。飲み忘れた場合は、抗菌薬を飲み忘れたときはどうする?をご覧ください。
参考資料
- AMR臨床リファレンスセンター「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」
- AMR臨床リファレンスセンター「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊」
- PMDA「使用上の注意改訂情報」
- AMR臨床リファレンスセンター「処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう」
情報の最終確認日:2026年9月2日

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