会社で年末調整を受けていても、副業や医療費、ふるさと納税、投資の状況によっては確定申告を確認する必要があります。
迷いやすいのは、一つずつなら申告不要でも、別の控除を申告すると扱いが変わることです。この記事では、まず申告義務を確認し、次に利用したい控除、最後に住民税への対応を整理します。
情報確認日:2026年9月11日。国税庁の令和8年4月1日現在法令等に基づく資料と、自治体の公式案内を確認しています。日本の居住者である会社員の代表例を扱います。個別の申告要否や所得区分は、税務署・自治体・税理士に確認してください。
会社員は原則として確定申告不要
勤務先の年末調整では、給与から源泉徴収した所得税等と、年間の給与・控除から計算した税額の差を精算します。多くの会社員はこれで所得税の手続きが完了しますが、給与以外の所得や年末調整では扱えない控除まで、すべて解決するわけではありません。国税庁:給与所得者で確定申告が必要な人
最初に、次の違いを分けて考えましょう。
| 確認すること | 主なケースと次の行動 |
|---|---|
| 申告義務があるか | 高額な給与、副業、複数の勤務先など。収入・所得と適用条件を確認する |
| 控除を受けるために申告するか | 医療費控除や住宅ローン控除の初年度など。対象になるか確認する |
| 投資の損失について申告するか | 他の口座との損益通算、翌年以降への繰越控除を検討する |
| 所得税の申告が不要でも手続きがあるか | 副業所得に関する住民税申告、ふるさと納税の申請などを確認する |
控除のための申告も含めて判断するための表です。「申告しないと義務違反になる場合」と「控除を受けたい場合」を混同しないことが出発点になります。
確定申告が必要になる代表的な会社員
給与収入が年間2,000万円を超える場合
判定するのは手取りや給与所得控除後の所得ではなく、年間の給与の収入金額です。2,000万円を超える人は、原則として確定申告が必要な給与所得者に含まれます。なお、国税庁の案内では、計算結果が還付となる人は申告義務の対象から除かれています。国税庁:給与所得者の申告対象
給与以外の所得がある場合
給与を1か所から受け、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合は、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるかが、代表的な確認点です。
逆に、給与収入2,000万円以下などの条件を満たし、その合計所得が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要になる扱いがあります。20万円は副業ごとではなく、対象となる所得の合計で確認します。国税庁:確定申告が不要となる給与所得者
原稿料などが雑所得となる場合、基本の計算は「総収入金額-必要経費」です。副業の呼び方だけで所得区分は決まらず、給与・事業所得・雑所得など、実態に応じた確認が必要です。国税庁:雑所得
2か所以上から給与を受けている場合
すべての給与が源泉徴収の対象となる場合は、原則として次の合計が20万円を超えるかを確認します。
年末調整されなかった給与の収入金額+給与所得・退職所得以外の所得金額
副業がアルバイトなどの給与なら、この判定では給与の「収入金額」を使います。給与にも一律に「売上から経費を引いて20万円」と当てはめないでください。
ただし、給与収入の合計から一定の所得控除を差し引いた額が150万円以下で、給与・退職以外の所得が20万円以下なら、申告不要となる例外があります。この計算では、雑損・医療費・寄附金・基礎控除を差し引きません。国税庁:2か所以上から給与を受ける場合
給与の支払者が2つあるだけで即断せず、各勤務先の源泉徴収票と年末調整の状況をそろえましょう。ここに挙げたもの以外にも、申告が必要なケースはあります。
「副業20万円以下なら何もしなくてよい」は注意
医療費控除などのために申告すると、扱いが変わる
給与所得者の20万円以下の扱いは、対象の所得を非課税にする制度ではありません。医療費控除などのために確定申告する場合は、この扱いで申告不要になっていた副業所得も含めます。国税庁:20万円以下の所得と医療費控除の申告
例えば、次の条件を仮定します。
- 給与は1か所で年間2,000万円以下、すべて源泉徴収の対象となり、年末調整済み。
- 副業の原稿料は雑所得に該当し、総収入30万円、必要経費に該当する費用12万円。
- 他の所得や、別の申告義務はない。
この場合、副業所得は18万円です。ただし、次に何をするかで確認事項が変わります。
| 行う手続き | 副業所得18万円の扱い |
|---|---|
| 所得税の確定申告をしない | 20万円以下の申告不要の条件を確認し、別途、住民税申告を確認する |
| 医療費控除のために確定申告する | 医療費控除とともに、この副業所得も申告する |
上の金額は判断手順を示す仮定です。経費を自由に決められるという意味でも、還付額の試算でもありません。
所得税の申告不要と、住民税の申告不要は別
横浜市の公式案内では、給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要でも、市民税・県民税の申告は必要とされています。一方、所得税の確定申告を提出した人は、原則として別に住民税申告をする必要はありません。横浜市:個人市民税・県民税の申告に関する質問
「確定申告しない」と決めた時点で終えず、申告先の自治体の公式案内で、自分の所得に必要な手続きと期限を確認してください。
なお、後述する源泉徴収あり特定口座の申告不要は別制度です。20万円以下の副業所得と同じ扱いだと考えないようにしましょう。
医療費が多かった場合
医療費控除は、年末調整では受けられず、利用する場合は確定申告が必要です。自分や生計を一にする家族のために実際に支払った医療費から、保険金などの補てん分を整理して判断します。「家族の医療費の合計が多かった」だけでは控除額は決まりません。国税庁:医療費を支払ったとき
対象の市販薬、家族分、保険金、申告に向けた準備は、医療費控除はいくらから?市販薬・家族分・保険金の扱いと申告準備で確認できます。
副業やふるさと納税がある家庭では、医療費の資料だけでなく、同じ年の収入・寄附の記録も一緒に集めると申告漏れを確認しやすくなります。
ふるさと納税と確定申告
ワンストップ特例は、原則として確定申告が不要で、年間の寄附先が5自治体以内などの条件を満たし、必要な申請をした人が利用する仕組みです。個人住民税の申告をする人も、対象外となる点に注意してください。
ワンストップ申請後でも、医療費控除や副業などを理由に確定申告すると、その年の特例は無効になります。申請済み分を含め、その年のふるさと納税を確定申告の寄附金控除に含めます。 国税庁:ふるさと納税とワンストップ特例
例えば、前の例の副業所得18万円がある人が、医療費控除を申告し、ふるさと納税もしているなら、「副業所得」「医療費控除」「寄附金控除」をまとめて確認します。医療費の入力だけで提出しないことがポイントです。
寄附上限や申請方法の詳しい確認は、ふるさと納税の始め方|控除上限・ワンストップと医療費控除の注意点を参照してください。
株をしている会社員は確定申告が必要?
利益額より先に、口座の種類を確認する
特定口座の「源泉徴収あり」を選択している場合、その口座内の上場株式等の譲渡益は申告不要を選択できます。「株で20万円を超える利益が出たら必ず確定申告」とはなりません。国税庁:特定口座制度
| 口座・取引の区分 | 最初に確認すること |
|---|---|
| 特定口座・源泉徴収あり | 申告不要とするか、口座間の損益通算などのために申告するか |
| 特定口座・源泉徴収なし、一般口座 | 課税される利益と他の所得を整理し、申告義務や給与所得者の申告不要条件を確認する |
| NISA口座 | 非課税の対象となる利益か、配当の受取方法を含めて確認する |
医療費控除の確定申告をしても、源泉徴収あり特定口座の譲渡益について、別途、申告不要を選択できます。副業所得の20万円ルールとの違いです。国税庁:口座ごとの申告・申告不要の選択
株で損失が出た場合
一定の上場株式等の売却損は、確定申告により、申告分離課税を選択した上場株式等の配当等と損益通算できます。給与所得から自由に差し引ける制度ではありません。国税庁:株式等の譲渡損失の取扱い
控除しきれない対象の損失には、翌年以後3年間の繰越控除があります。適用には損失が出た年の申告に加え、その後も必要書類を付けて連続して申告する必要があり、取引のない年も申告が必要です。国税庁:上場株式等の損益通算・繰越控除
同じ源泉徴収口座に受け入れた配当等と売却損は、口座内で調整される場合があります。他の口座との通算や繰越控除を考える前に、年間取引報告書で処理済みの内容を確認しましょう。国税庁:源泉徴収口座内の損益通算
NISAの損失は、課税口座に持ち込めない
NISA口座内の対象となる売却益や配当等は非課税ですが、損失は税務上ないものとして扱われます。課税口座の利益との損益通算も、損失の繰越控除もできません。国内上場株式等の配当を非課税で受けるには、株式数比例配分方式で受け取る必要があります。国税庁:NISA制度
枠や制度全体を確認したい場合は、NISAの基本を参照してください。申告を考える際は、まず金融機関名だけでなく、取引ごとの口座区分を確かめます。
特定口座とNISAの違い、証券会社をまたぐ損益通算、配当の受取方法を詳しく確認したい場合は、NISA・株・投資信託の税金ガイドをご覧ください。
住宅ローン控除の初年度
給与所得者でも、住宅ローン控除を初めて受ける年は、原則として必要書類をそろえて確定申告します。2年目以降は、必要な手続きを行うことで年末調整でも控除を受けられます。国税庁:住宅借入金等特別控除の手続き
これは「控除を受けるために必要な申告」です。住宅を購入しただけで、すべての人に申告義務が生じるという意味ではありません。
対象住宅、入居年、所得、借入れなどによって条件が異なります。借入先や勤務先から案内を受けた場合も、自分の入居年に対応する国税庁の要件を確認してください。
確定申告=税金が必ず戻るわけではない
確定申告は年間の所得と税額を計算し、源泉徴収等との過不足を精算する手続きです。追加納税となる場合もあります。国税庁:確定申告
申告義務がない人でも、源泉徴収等の税額が年間の税額より多い場合には、還付を受けるための申告ができます。これが還付申告です。国税庁:還付申告
医療費控除は課税対象となる所得を減らす所得控除なので、控除額がそのまま振り込まれるわけではありません。住宅ローン控除のように税額から差し引く仕組みとも区別します。医療費控除の仕組み、住宅ローン控除の仕組み
「医療費控除を使うから必ず還付」と決めず、副業などの所得も含めて計算した結果を確認しましょう。
会社員の確定申告チェックリスト
次の8項目を、同じ年分について順番に確認します。チェックが付いた項目は、すぐ申告義務が確定するという意味ではなく、上の各節を確認する目印です。
- □ 給与収入の基準:年間2,000万円を超えていないか。手取りではなく源泉徴収票の支払金額等を確認する。
- □ 副業・原稿料:給与か、事業・雑所得などか。対象となる収入と必要経費、他の所得も整理する。
- □ 複数の勤務先:2か所以上から給与を受けていないか。どの給与が年末調整済みか確認する。
- □ 医療費控除:利用する予定があるか。支払った人、対象費用、補てん額を整理する。
- □ ふるさと納税:別の理由で確定申告や住民税申告をする予定がないか。寄附の記録をそろえる。
- □ 株の損益通算・繰越控除:利用を検討するか。口座区分と年間取引報告書、過去の申告内容を確認する。
- □ 住宅ローン控除:初めて受ける年ではないか。入居年に対応する要件と必要書類を確認する。
- □ 住民税申告:所得税の申告をしない場合も、自治体への申告が必要ではないか確認する。
資料は「給与」「副業」「医療費」「寄附」「投資」「住宅」の6つに分けると、該当するものを取り出しやすくなります。
家族分の医療費と本人名義の給与・寄附の資料が混ざりやすい家庭では、支払った人と年分も付記しておきましょう。毎年の家計確認と組み合わせる考え方は、子育て世帯のお金の優先順位でも整理しています。
親や祖父母など個人からお金・財産を受け取った場合は、所得税の確定申告とは別に贈与税の申告を確認します。年間110万円の考え方や申告が必要になる場面は、贈与税の判断ガイドで整理しています。
還付申告はいつまでできる?
申告義務のない人の還付申告は、原則として対象年の翌年1月1日から5年間行えます。通常の確定申告期間だけに限られません。国税庁:還付申告の期間
一方、通常の確定申告の期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで、申告・納付の期限は原則3月15日です。年ごとの期限は国税庁の案内で確認してください。国税庁:申告期間・期限
申告義務がある人が「5年間は後回しにしてよい」と考えるのは誤りです。 また、期限内申告が条件の特例や、すでに提出した申告の訂正は、還付申告の期間だけで判断しないでください。
まとめ
会社員の確定申告は、まず給与・副業から申告義務を確認し、医療費や住宅など利用したい控除、ふるさと納税、投資の扱いを重ねて考えます。所得税の申告をしない場合は、住民税の確認も残ります。
特に、医療費控除のために申告する年は、20万円以下の副業所得や、ワンストップ申請済みの寄附を見落とさないことが大切です。源泉徴収あり特定口座の申告不要は、別の制度として確認しましょう。
最初の一歩は、今年の源泉徴収票と、該当する収入・支払いの記録をそろえることです。納税や還付の見込みを家計に反映するときも、未確定の還付金を投資予算に織り込まず、資産形成の基本で整理した近い支出・予備費との順番を確認してください。


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