資産形成は、投資だけを指す言葉ではありません。将来の目的に向けて、預貯金と投資を使い分けながらお金を準備していくことです。
基本の順番は、家計を確認する→使う目的と時期を決める→生活防衛資金を準備する→余裕資金で投資を検討する、です。
この記事では、これから資産形成を始める方に向けて、家計の収支と使う時期から「今は何を優先するか」を決める方法を解説します。投資商品の利益・損失の仕組みは、投資の基本で確認できます。
私が資産形成を考えるようになった経緯は、薬剤師として働く中で、資産形成を考えるようになった話にまとめています。
資産形成とは
資産形成とは、教育費、住宅費、老後資金など、将来必要になるお金を計画的に準備することです。
預貯金には、元本を確保しやすく、必要なときに使いやすいという特徴があります。一方、株式や投資信託には値上がりが期待できる反面、元本割れの可能性があります。
どちらか一方を選ぶのではなく、お金を使う時期と目的に応じて使い分けることが資産形成の基本です。
預貯金と投資をどう使い分けるか
投資に回してよいのは、当面使う予定のない余裕資金です。生活費や近く使う予定のお金は、値動きのある商品に回さない方が安全です。
| お金の目的 | 基本的な置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 毎月の生活費 | 普通預金など | すぐに使えることを優先する |
| 急な支出に備えるお金 | 預貯金 | 元本の確保と換金性を優先する |
| 数年以内に使う予定のお金 | 預貯金を中心に考える | 必要な時期の値下がりを避ける |
| 長期間使う予定のないお金 | 預貯金と投資を組み合わせる | 値動きを受け入れられる範囲で運用する |
急な支出に備えるお金は「生活防衛資金」と呼ばれます。投資を始める前に、まず生活防衛資金を確保しておくと、値下がり時に資産を慌てて売る可能性を減らせます。
詳しい考え方は、生活防衛資金とは?いくら必要?投資を始める前に準備したいお金で解説しています。
家計の黒字を、そのまま投資額にしない
以下は本人の家計や一般的な推奨額ではなく、整理方法を示す架空の例です。手取りが月30万円、通常の生活費が24万円でも、投資に回せるお金が毎月6万円あるとは限りません。
| 整理する金額 | この例での仮定 | 確認すること |
|---|---|---|
| 収支の差 | 30万円 − 24万円 = 6万円 | 生活費に何を含めたか |
| 毎月ではない支出への備え | 年24万円 ÷ 12か月 = 月2万円 | 税金、保険料、家電等を生活費と二重計上しない |
| 近い予定支出の積立て | 月2万円 | 使う年・月と必要額 |
| 残る金額 | 6万円 − 2万円 − 2万円 = 2万円 | 生活防衛資金が不足していれば、その補充もここから考える |
残る2万円も、全額を投資すべきという結論ではありません。収入減や臨時支出を想定して、現金を補充するか、投資へ回すかを決めます。配偶者がいる場合は、家計全体と個人の財布を混ぜずに整理してください。
ふるさと納税を利用する場合も、寄附時点では先に現金が出ていきます。税の控除上限と、今支払える金額は分けて考えます。収入や医療費が変わった年の見積もり方は、ふるさと納税の始め方で整理しています。
副業の収入や投資の利益を家計に含めるときは、納税に必要なお金も確認します。副業・投資をしている会社員の確定申告ガイドを入口に、NISAと課税口座の違い、申告が必要になる条件を整理してください。
余裕資金で投資を検討するときの基本
金融庁は、資産形成の基本として長期・積立・分散投資を紹介しています。ただし、期間や購入先を分けても損失はなくなりません。家計で確保すべき現金を先に分け、残った長期資金の範囲で検討します。効果と限界は投資の基本で詳しく解説しています。
参考:金融庁「資産形成の基本」
積立額は家計から決め、試算は幅を持って確認する
運用の試算から毎月の投資額を逆算する前に、上の家計例のように年間支出と予定支出を差し引きます。利益が出る計算だけに頼らず、利益が出ない場合や値下がりした場合にも必要なお金を確保できるか確認してください。金額・期間ごとの試算はNISAの積立額の決め方にまとめています。
自分で条件を変えて試算する場合は、金融庁「つみたてシミュレーター」も利用できます。
NISAは家計の準備後に検討する制度
NISAは対象商品の利益を非課税にする制度であり、元本を保証するものではありません。生活防衛資金と近く使うお金を確保してから、利用を検討します。制度の全体像はNISAの基本、今始められるかの点検はNISAを始める前の7項目で確認できます。
資産形成で避けたい4つの失敗
| 避けたい行動 | 考えられる問題 | 対策 |
|---|---|---|
| 生活費まで投資する | 必要なときに値下がりしている可能性がある | 生活防衛資金を先に確保する |
| 高いリターンだけで商品を選ぶ | 想定以上の損失や値動きが生じる | リスク・投資先・コストを確認する |
| 一つの銘柄や地域に集中する | 特定の出来事の影響を受けやすい | 資産・地域・銘柄を分散する |
| 値下がりして慌てて売る | 安値で売却し、その後の回復を逃すことがある | 目的・期間・許容できる損失を事前に決める |
ただし、途中で売却することがすべて間違いというわけではありません。使う時期が近づいたとき、家計が変わったとき、当初の投資方針から外れたときは、投資額や保有商品を見直します。
資産形成を始める5ステップ
1.毎月の収入と支出を確認する
家計簿や口座履歴を確認し、毎月いくら残せるのかを把握します。通信費、保険、使っていないサブスクなど、継続的な支出から見直します。
関連記事:資産形成の第一歩|固定費の見直しでお金を増やす方法
2.お金の目的と使う時期を決める
教育費、住宅費、老後資金など、何のためのお金かを整理します。使う時期が近いほど、預貯金を中心に考えます。
教育費や住宅費などを親・祖父母から援助してもらう、子どもへ資金を渡すといった家族間の資産移転では、運用方法を決める前に贈与税も確認します。年間の贈与額や生活費・教育費の扱いは、贈与税の基本と申告の確認ポイントで整理しています。
家族の資産を相続で受け継ぐ場合も、受け取った財産をすぐに運用資金と考える前に、相続税の申告要否と納税に必要なお金を確認します。生前贈与の加算や自宅の特例も含めた確認順序は、相続税の基礎控除と申告判断ガイドで整理しています。
3.生活防衛資金を準備する
病気、休職、家電の故障など、急な支出に備えるお金を確保します。必要額は家族構成や働き方によって異なります。
4.投資に回せる金額を決める
当面使う予定がなく、値下がりしても生活に影響しない範囲で設定します。「月1万円」などの金額を先に決める必要はありません。
教育費・住宅費・老後資金の優先順位を整理しにくい場合は、FPなど第三者への相談も選択肢です。相談範囲や費用、商品提案の有無を確認する方法は、FP相談は無料と有料どちら?でまとめています。
5.余裕資金の範囲で制度と商品を検討する
現金を確保した後、長期間使わないお金のうち、値下がりを受け入れられる範囲を投資に振り向けます。投資する準備が整ったら、投資信託の仕組みを理解し、口座開設から積立設定・購入確認までの手順へ進みます。金融機関の違いは証券会社の比較で確認できます。
よくある質問
毎月いくら投資すればよいですか?
すべての人に共通する金額はありません。生活防衛資金と近く使う予定のお金を除き、収入が減った月でも無理なく続けられる範囲で決めます。
長く続ければ損をしませんか?
投資期間が長くても、元本割れの可能性は残ります。長期・積立・分散はリスクを抑えるための考え方ですが、損失をなくすものではありません。
すぐにNISAを始めた方がよいですか?
急いで始める必要はありません。家計を確認し、生活防衛資金を準備してからでも遅くありません。制度や商品の仕組みを理解できないまま投資することは避けましょう。
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まとめ
- 資産形成は、将来の目的に向けて預貯金と投資を使い分けること
- 投資より先に、家計の確認と生活防衛資金の準備を行う
- 投資する場合は、長期・積立・分散を基本に考える
- NISAは利益が非課税になる制度であり、元本を保証するものではない
最初に行うことは、証券口座の開設ではなく、現在の家計と将来必要になるお金の確認です。そのうえで、預貯金と投資の配分を考えましょう。
2026年9月10日の更新:家計の黒字から年間支出・予定支出を分ける仮例を追加しました。積立試算の月率を明示し、0%・マイナスの場合も補いました。以下の従来の確認日とは区別して記載しています。
この記事の情報について
- 情報の確認日:2026年8月23日
- 執筆者:たつまる(病院薬剤師)
- 主な確認先:金融庁「資産形成の基本」「つみたてシミュレーター」
本記事は資産形成の一般的な考え方を解説するもので、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資には元本割れの可能性があります。制度や商品情報は変更されることがあるため、利用前に公式情報をご確認ください。
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